開発責任者の離脱から、攻めに転じるまで。
一人のエンジニアに依存していた複合サービスが、その一人を失いました。誰も中身を読めません。田村屋はまず、その状態を数字にしました。
- フィットネス業界向けSaaS
- モバイル2アプリ + Webダッシュボード + API + バッチ処理
- 2026年2月〜(継続中)
- CTO代行(外部から参画)
- 情報 / 組織 / 金融
インフラ費用
監査で発見した過剰キャパの削減による
技術健全度
10カテゴリ・100点満点の自社評価指標
自動テスト件数
主要リポジトリ
引き継ぎドキュメント
ゼロから作成
読める人が、いなくなった
メインの開発者のコミットは、2025年11月を最後に止まっていました。サービス自体は動き続けています。会員が使い、トレーナーが使い、ジムの日々の業務がその上に載っています。それでも、中身を読める人間が社内に一人もいなくなりました。
田村屋が入ったのは2026年2月。引き継いだのは、13のリポジトリと4つのクラウドプロジェクト、2つのモバイルアプリ、Webダッシュボード、API、バッチ処理。手順書は一枚もありませんでした。デプロイの方法を尋ねると、「コンソールを見ればわかります」と返ってきました。
ただ、経営者にとっての本当の問題は技術ではありませんでした。いま何が危ないのか、どこにいくら掛かっているのか、直すのに何ヶ月かかるのか——判断するための材料が、一つもないことでした。
火を消さずに、まず測った
普通は、目の前で燃えているものから消します。田村屋は最初の一ヶ月を、全量の監査に使いました。
13のリポジトリとクラウドの全プロジェクトを読み切り、誰が入っても辿れる形の引き継ぎドキュメント40件に落としました。そのうえで、技術の健全度を10のカテゴリ——環境分離、テスト、セキュリティ、可観測性、属人性など——で採点しました。
出た点数は、100点満点で28点でした。
悪い点数を経営者に見せることになります。それでもあえて数字にしたのは、比較できる指標がなければ経営者は技術に投資する判断ができないからです。「危ないです」は判断材料になりません。「28点です。半年で50点まで上げます」なら、投資の話ができます。
69%という数字が、判断を通した
監査で最初に見えたのは、誰も使っていないインフラが毎月費用を食い続けていることでした。前任者が去ったあと、止める判断をする人がいませんでした。
田村屋は自分でインフラをコード管理下に取り込み、既存構成との差分がゼロであることを確認したうえで、過剰な分を削りました。削ったあとは本番の全サービスが正常に応答しているかを一つずつ検証しています。インフラ費用は69%下がりました。
ここで、経営者との関係が変わりました。
以降に必要だったのは、もっと大きな——一度サービスが止まるかもしれない——判断でした。開発環境を新しく作ること。本番リリースの経路を作り直すこと。このとき田村屋は技術の言葉で説明していません。「開発環境と本番環境が分かれていない」ではなく、「開発中の未完成な機能が、お客様の画面に出てしまう事故が、すでに一度起きています」と伝えました。対策の選択肢と、それぞれに掛かる期間と止まるリスクを並べ、決めるのは経営者に返しています。二つとも承認され、実行されました。
守りから、攻めへ
2026年8月現在、技術健全度は50点。自動テストは0件から1,654件になり、障害を検知する仕組みが入り、インフラはコードで管理されています。
そして開発は、一人に依存しない形に戻りました。田村屋は必要な技術スタックを採用向けに言語化し、新しく入ったエンジニアが初日から動ける手順を用意しています。いまチームは複数人で回っています。
このサービスはいま、請求業務の自動化とAI機能の開発に着手しています。守りに使っていた時間が、攻めに戻りました。
田村屋は、まだ中にいます。
この案件での関わり方
参謀だが、自分で実装する
監査して報告書を置いて去るのではありません。インフラのコードも、性能改善のコードも自分で書き、本番で検証するところまでを範囲にします。
経営の言葉に翻訳してから、判断は返す
技術者としての結論を押し付けません。リスクは事故の確率と損失に、対策は期間と費用に翻訳します。決めるのは経営者に委ねます。
採用とチーム作りまで入る
一人に依存して壊れた組織を、人が入れば回る形に変えます。技術要件の言語化から、入ったあとのルール作りまでを見ます。